「人生をより良く生きたいと願う人々にいつまでも愛用して貰えるモノやサービスを創造する」こと。そのことが実現できるのは社会が抱える課題に向き合い、卓越性を追求した結果である。
今は複雑な時代である。昔のような単純な労働の充実では複雑さに対応できなくなってきている。かつては働く意味なども深く考えなくても良かったが、社会の急速な展開によって、それまで想像しえなかったカタチでの仕事が生まれてくる。同時にどのようなカタチで社会と関わっていけば良いのかという精神的に不安定な状況に陥ってしまう時代になった。
今の時代は誰もが、ひとつの歯車になってしまっているので自己完結がしない。特に経済軸のみの価値観が当たり前になった日本では、アップル製品やジャンボ機の機体、人工衛星のパーツのかなりの部分に日本製の部品が用いられていても、文字通りパーツでしかなく、希望を抱かせる「未来」を発明してはいない。
確かに職人の世界は、経済軸よりもこれまでの文化の蓄積、精神を伴なって励んできた。この点では卓越したものがあることは間違いない。しかし、その多くは単眼的な卓越性の探究であって、かつてのウォークマンを生みだしたような冒頭の「人生をより良く生きたいと願う人々にいつまでも愛用して貰えるモノやサービスを創造する」ことではない。
発想を変えるのは学習の積み重ねしかない。学習することで自分の中に変化が起こる。教育制度にあるような理科系や文科系の区分があるような学習ではなくて、まずはビジョンを掲げた上で、今を生きる人たちに向けての関心を高めること、そして様々なことへの好奇心が持てる自分を目指すことが有効だと思う。