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21世紀型ハングリー精神~藤沢久美

みなさんハングリーですか? イエスでしょうか? 日本の年配者の人たちが嘆いているのは、日本の若者がハングリー精神をなくしてしまっているということです。

本当にそうなのでしょうか? 若者はハングリーじゃないんでしょうか?

私は新興国を訪問して、ハングリーな若者たちに会いたいと思っていました。メキシコの貧困街で働く女性にも会いましたし、都会にやってきて勉強するという中国の少女にも会いました。エチオピアの少年たち、ヨルダンの難民キャンプの子供たち、ルワンダの貧しい農村の子供たち。みんなに会いました。

そんな彼らは、全員がハングリー精神を持っていたんです。そして私に「勉強したいんだ」と言ったんです。どうして勉強したいの? と聞くと、「自由がないんだ。食べたいものを食べたことがないんだ。着たい服を着たことないんだよ。いつも食べているものも、着ているものも、寄付してもらったものしかないんだよ」と。「勉強して仕事に就くことができたら、やっと自由を手にすることができるんだ」と言ったんです。

一方、日本ではこんな学生の声も聞こえます。「何を選んだらいいのかわからないの。自由が多すぎて。選択の自由が多すぎて何を選んだらいいのかわからない」と言います。そこで私は不思議に思ったのは、自由は人を幸せにするのかどうかということ。

ルワンダの子供たちが、自分たちの未来の夢を絵に描いてくれました。ある男の子は車の絵を描いて、「これはトヨタの車なんだよ」と言いました。「一生懸命勉強して、仕事を得て、そして車を買って、そして首都のキガリに両親を乗せて連れて行ってあげたいんだ」と。また、他の男の子はこう言いました。「僕の国が日本だったら、日本みたいだったらいいのになあ」と。

日本みたいに? 日本のことを何か知っているの? 皆さん、ご存知でしょうか。この村には電気がありません。でも、この子たちの学校にはパソコンがあって、インターネットに接続できます。グローバル企業が社会貢献プログラムとして寄贈したものです。それらを使ってこの子たちは先進国の生活を知っていて、そしてインターネットを介して自分たちの夢を重ねているんです。

「自分の国が日本みたいだったらいいのに」。

そうね、もし日本のような国に住んでいるんだとしたら、将来そういう国に住んでるとしたら、物質的にも経済的にも豊かになって、自由もたくさん手に入るでしょうね。でも、若者の中には何を選んだらいいか分からない人もいっぱいいる。そして、なんのために働いているのか分からなくなって鬱々として自殺をしてしまう若者もいるの。自殺をする人の数が交通事故で亡くなる人の数よりも多くなるの。あなたの未来の国はこんな国になるのよ。

私はこんなことを言っていいんでしょうか。

私たちの祖父母がかつて、一生懸命勉強して、働いて、第二次世界大戦後の豊かな日本を作り上げてきました。私たちの今日の繁栄は彼らの努力によって成り立っているんです。そして、私たちはそのことを考えて、感謝をするということを忘れていました。日本人の中にはこの長く続くデフレの中、こんなことを言う人もいます。

「日本人は平和ボケをしてしまったんだから、このデフレを乗り越えるにはもう一度ハングリーにならないとダメなんだ。第二次世界大戦あとの焼け野原にもどらなきゃいけないんだ」。

焼け野原。想像できますか? 焼け野原からやり直すのにどれだけ苦しく、そして辛い努力が必要か。私は本当に悲しく、辛いという気持ちを感じました。

私が東日本大震災の現場に立ったときのことです。そこで、今でも復興の中で苦しむ人たちを見て、焼け野原になるようなリスクを避けて、経済成長することはできないのだろうか、それを見つけ出すべきだと私は思ったんです。国は成長するとハングリーさを失ってしまうんでしょうか?

先進国を見てみると、ハングリーな移民労働者がいます。彼らは新興国や途上国からやってきています。先進国の経済成長には、彼らハングリーな移民労働者が貢献しているんです。ハングリーエンジンと呼ばれている人たちです。どうしたらハングリーエンジンに頼ることなく経済成長を続けていけるんでしょうか? このハングリーな人たちがいなければ経済成長は成しえないのでしょうか?

実はある答えを、日本の伝統的な経営をしている会社に発見しました。日本には約2万社も、100年以上の社歴がある会社があります。そしてまた400社以上の会社が、300年以上の歴史を持っています。そういった会社の中には黒字を100年以上続けている会社があり、社員を解雇したことがないというところがあるんです。信じられますか?

そういった会社の経営者、CEOはこういうふうに言います。「社員の人としての成長が会社の成長につながっているんだ」「わが社の一番重要な資産は社員だ」と。こういった会社の社是にはハングリー精神は入っていません。彼らは人や社会に貢献するということを掲げています。

日本の若者でも、そのような伝統的な中小企業に興味を持っている人たちの数が増えています。日本の若者は実はハングリーなんです。というのは若者が、今のこの社会の中で一番純粋な精神を持っている人たちなんです。ですから社会に足りないものに敏感なのです。

私たちの先輩たちが若かったころ、日本にはお金や物が足りませんでした。だから先輩たちはそのころ物やお金にハングリーだったんです。

でも今は両方とも溢れています。ただ私たちに足りない、この日本に足りないものは人を尊重することや、助け合う気持ち、そしてまた物や人を大切にする気持ちです。若者たちはそこに気づいているんです。敏感に気づいているんです。だから社会貢献をする組織、例えばNPOとかNGOなどに憧れる若者たちが増えているのです。

若者たちはハングリーです。彼らは社会に貢献するチャンスを得たいと思っているんです。そして変化を起こしたいと思っているのです。古くからある日本の伝統的な経営をする企業と若者たちが一つになると、21世紀の新しい経済成長の在り方が生まれてくるのではないかと感じています。私たちは若者たちの声に耳を傾けるべきです。というのも、日本が先進国として今何が無くなっているのか、何を失っているのかというのは、若者たちが教えてくれるからです。






by stylejapan | 2015-05-04 08:08 | 生活創造プロジェクト
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