人は論理性にかける生き物である。皆でまともに話し合った結果、間違った結論を導くことも少なくない。
感情によって判断し、多くの“勘違い”を引き起こす。合理的な行動ができなかったり、損してまで感情的行動を起こしたり、将来の大きな利益を省みず、目先の小さな利益に飛びついたりする。
経済学で長年に渡り蓄積されてきた理論に認知心理学の成果を取り入れて改良するというのが行動経済学の目指す方向である。それは言葉を変えれば、人間の感情、とりわけ論理性に欠けた“勘違い”まで重視する経済学といえる。商業学の中では重要な位置を占める。
人間は合理的に考えているとは限らない。例えば、千円手に入れたときの喜びよりも、千円なくしたときの悲しみの方が大きくないだろうか。
同じ額でも自分の「利益」と「損失」では「損失」の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとる事を示している。これを行動経済学では損失回避性と言う。
Aショップで¥10,000で売られている電気製品が、15分ほど先の1つ隣の駅のBショップでは、¥6,000で売られている場合、かなりの確立でBショップへ行くと思うが、同じくAショップで¥250,000で売られているPCが、Bショップで¥246,000で売られていた場合、わざわざBショップへ行くかどうか。
損失・利益共に額が大きくなればなるほどその感覚が鈍ってくる事も実験によって分かっており、これを感応度低減性と言う。
ショッピングモールで自転車を買おうとした際、7種類の自転車を取り揃えているショップAと、20種類の自転車を取り揃えているショップBでは、どちらの方が売り上げが良いだろうか?又、お客さんとしては、どちらのお店で買い物をした方が満足度の高い買い物ができるだろうか?
実験によれば、購入率はショップAの方が約10倍高く、買い物後の顧客の満足度合いもショップAの方が高かった。
サービスを提供する側としては、より多くの選択肢を用意し、お客さんによりマッチしたサービスを提供しようとする方が良い結果をもたらすのではと考えられてきた。特により多くの選択し同士を比較し、自分にとって最高の選択をしようとするお客さん(マキシマイザー)は、選択後も選ばなかった選択肢について悩んでしまい、結果的に満足度が低下してしまう傾向にある。これを選択回避の法則と言う。
このように行動経済学とは、生身の人間を対象とし、人間がどのような状況下で、どのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明することを目的とした実践的な経済学である。