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Choosing Wisely(賢い選択)キャンペーン
《患者と医師の間において本当に必要なことは何かという会話が成されることを促進させる》


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Choosing Wisely(賢い選択)キャンペーンは、アメリカ内科医学委員会により2011年から展開された運動である。患者と医師に対して過剰医療についての情報を提供することで、医師と患者との関係を密にし、患者中心医療の推進を目的としている。

このキャンペーンにおいて、それぞれの分野学会に対し、各分野において過剰医療を行わないための推奨事項を5項目挙げるよう依頼した。各学会よりもたらされた勧告「医師と患者が問い直すべき5つの項目」が公開されている。
これらは、患者と医師の間において本当に必要なことは何かという会話が成されることを促進させるためのものである。

過剰医療をまねく理由には、医師側の便益、患者側の希望、不適切な経済的要因、医療制度、ビジネス的の圧力、マスメディア、意識の欠如、防衛医療(保身医療)などが挙げられる。

Choosing Wiselyの意義は、米国の医療界自身が動き始めたところにある。患者にとっては、自らの診断、治療、予防の選択肢を考えるうえで役に立つ。国にとっても、保険者にとっても削減すべき医療を考えるための判断材料になる。企業にとっても、ヘルスケア事業を考案するうえで参考となるところが多々あるだろう。

医療界に関して言えば、自分で自分の首を絞めているようにも映る。治療法を選ぶという医師の裁量を狭めることにもつながりかねないからだ。それでも米国の学会が無駄撲滅に動き始めたのは、巡り巡って自分たちのためになると考えているからである。無駄なところにカネがつぎ込まれると自分たちが望むような必要な医療にカネが回らなくなる。医療界だって無駄な医療にカネがつぎ込まれていいわけはないのだから。


【一般医】

⬜️アメリカ家庭医学会
危険サインのない腰痛に対し、発症から6週間未満はX線撮影を行う必要はない。
副鼻腔炎に対し、症状が6日以降も続く場合や初診時より症状が悪化している場合を除き、機械的に抗生物質を処方すべきではない。
自覚症状のない低リスク患者に対し、毎年のように心電図検査やその他心臓検査を行う必要はない。
⬜️一般内科学会
インスリン投与を行っていない2型糖尿病患者は、指グルコース試験を毎日家で実施する必要はない。
自覚症状のない成人に対し、定期的な健康診断は不要である。
低リスクの外科手術であれば、術前のルーチン検査は不要である。
平均余命10年以下の成人に対しては、がん検診は不要である。
患者や医療従事者の利便性のために、CVカテーテルを設けたり、また挿入したままにしてはならない。
⬜️アメリカ小児科学会
ウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎)と思われる場合は、抗生物質を投与すべきではない。
4歳以下の子供の呼吸器疾患に対し、風邪薬や鎮咳剤を投与したり推奨してはならない。
頭部の軽い外傷に対し、CT撮影は不要である。
子供の単純な熱性けいれんに対し、CTやMRIなどの神経画像撮影は不要である。
日常的な腹痛の訴えに対し、CT撮影は不要である。
⬜️アメリカ老年医学会
進行性の認知症には経管栄養法を推奨しない。代わりに経口摂取援助を提案する。
認知症による行動と心理の徴候について、抗精神病薬を第一選択肢とすべきではない。
65歳以上に対し、HbA1c7.5%未満達成のために薬物療法を行なうべきではない。ほとんどの場合は中程度の管理でよい。
高齢者の不眠症・興奮・譫妄に対して、ベンゾジアゼピンや他の催眠鎮静薬を第一選択肢とすべきではない。
無症候であれば、高齢者の細菌尿症に抗菌薬を用いるべきではない。


【専門医】

⬜️アメリカ外科学会
軽微・単箇所の外傷に対して全身CT撮影は不要である。
平均余命10年未満であり、家族や本人に大腸腫瘍の病歴が無い患者については、自覚症状が無いのであれば大腸癌検査は不要である。
病歴や健康診断結果において特筆点の無い外来患者に対し、入院時や手術前の胸部X線撮影は不要である。
⬜️アメリカ麻酔科学会
癌に由来しない慢性痛に対しは、オピオイド系鎮痛剤を第一選択肢としてはならない。患者と話し合いリスク説明を行うまでは、オピオイド系鎮痛剤による長期薬物療法を行ってはならない。
⬜️アメリカ神経学会
頭痛に対し、脳波測定は不要である。
単純な失神に対し、他の神経学的症状がないのなら頸動脈造影は不要である。
片頭痛に対してのオピオイドおよびButalbital処方は、最終手段である場合を除いてすべきでない。
⬜️アメリカ耳鼻咽喉科学会
突発性難聴に対し、頭部CTオーダーは不要である。
中耳腔換気用チューブ留置後の耳漏に対し、合併症が無いのであれば経口抗生物質を処方すべきではない。
急性外耳炎に対し、合併症が無いのであれば経口抗生物質を処方すべきではない。
急性副鼻腔炎に対し、合併症が無いのであれば画像撮影オーダーは不要である。
主訴が嗄声である患者に対し、前喉頭検査をせずにCTやMRIをオーダーすべきではない。
⬜️アメリカ精神医学会
適切な初期評価および経過観察が行われていない患者に対し、抗精神病薬を処方してはならない。
二種類以上の抗精神病薬を継続的に投与してはならない。
認知症による行動・心理症状の治療に際し、抗精神病薬を第一選択肢とすべきではない。
成人の不眠症に対し、抗精神病薬を継続的にファーストライン治療としてはならない。
精神障害でないのならば、児童と青年に対して抗精神病薬を継続的にファーストライン治療としてはならない。
⬜️アメリカ頭痛学会
片頭痛基準を満たす容態安定した患者に対し、神経画像研究は不要である。
頭痛に対し、MRI撮影が可能な状況であれば、緊急時を除いてCT撮影は不要である
臨床試験でないのであれば、片頭痛トリガーポイントへの外科的非活性化処置は推奨しない。
再発性の頭痛に対して、オピオイドおよびButalbital処方は、最終手段である場合を除いてすべきでない。
頭痛に対し、OTC鎮痛薬を長期・頻繁に用いることは推奨できない(薬物乱用頭痛)。
⬜️アメリカ腎臓学会
徴候や症状のない平均余命の少ない患者に対し、ルーチン的がん検査は不要である。
高血圧・心臓病・慢性腎臓病(CKD, 糖尿病を含む)の患者に対し、NSAIDsの処方は避けるべきである。

*詳細は「:en:Choosing Wisely」を参照






by stylejapan | 2014-06-30 11:35 | Selfcareについて
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