歴史的町並みが残っているエリアにマンションが立つ、派手な幟や看板が目を引く店ができる。
これらは市民的に美しい街並みをのぞむのとは異なり、景観的価値を認めた上で、それを消費する方向でお金の流れを作ろうとする1部の人たちの思惑があるのだろう。
ヨーロッパのような街並みを目指すなら、街を歩行の対象と捉える観点が不可欠であるが、車の通行を優先し、道幅を拡張しながらも、街並みを素敵にしたいという考え方には矛盾が生じる。
人は街を歩きながら、その景観の中に在る「自分」や「他人」を見る体験を通して、つかのまのアイデンティティを構築する機会が得られたりする。そのことが、暮らしにおける景観の価値ではないだろうか。
かつての地方都市は貧しいなりにも精神が豊かであったぶん、一定のまとまりのある景観が存在したが、短期的利益を得ようするコンビニやロードサイド店の乱立により、景観は消費され、荒れた状態にある。
今後とも景観を消費対象とみる動きを封じ込めない限りは、魅力的な街並みの実現は難しいと思う。