自分の人生を生きていない人とは、「自分以外の誰かや何かに振り回されていて、自分ではどうしようもない、自らの信念によって選択や決定を行わない」という人をさす。
そういった人によく見られるのが「直線的に物事を考える癖」である。
哲学者ヴィトゲンシュタインは、その癖について、「たとえば自分の将来について思いを巡らすとき、今の自分の状況から将来がどう直線的につながっていくかというふうにまっすぐな線を引いて考える。また、世界がこれからどうなるかということを考えてみるときですら、今の世界の動きがさらに進展していくという前提で未来の予想を立ててしまうのだ。今の世界の動きから突如にして変貌していくとか、そのつど世界が変化を続けていくといったふうに考えたりはしない。しかし、実際の世界はそういうふうに動いているのではないか。」と説く。
実際の世界はそんなに単純には動いていないので、自分で自分の人生を切り拓いてきた人は、時間を一直線に流れていくものだとは考えないが、組織や誰かに依存して生きてきた人は、直線的な考え方に縛られてしまい何事も単純な因果関係で捉えるためにくだらない法則的な理屈にひっかかってしまうことが多い。
そういう人に勧めたいのは、ニーチェの「仕事が自分を強くする」という言葉である。仕事に打ち込んでいる人は、自分に迷わないし、たじろがない。仕事によって心と人格が鍛錬され、ブレない自分がつくりあげられる。
苦楽を重ねて、自分自身の価値(実力)をつくり上げていくのが人生だと思う。そのためには、易きに流されないようにして自分の人生を生きなければならない。
「太陽は明日も昇るだろうというのは一つの仮説である。すなわち、われわれは太陽が昇るかどうか、知っているわけではない。」(ヴィトゲンシュタイン)