社会は、市民や企業の自由な活動によって成り立っている。しかし、そこには市民や企業では解決できない問題や矛盾が生じてくる。さまざまな社会資本の整備も企業の自由な経済活動からは生まれない。
経済学では市場原理の及ばないこうした問題領域を「市場の失敗」と呼ぶ。つまり、こうした領域については国や自治体が責任を持って問題を解決しようというのが「公共政策」である。
その政策には、大きくは3つの階層がある。それらは「政策:policy」⇒「施策:program」⇒「事業計画:project」であり、多くの場合、政策は国が策定し、施策と事業計画は自治体が局面を担っている。
政策には、公共事業のように自治体が事業主体になるものと、補助金や規制などの市民や企業の活動に何らかの動機づけを促すものとがある。また、これらは「企画の段階」と「執行の段階」に分かれる。
この「企画の段階」と「執行の段階」は、ひとつの自治体で行われるのが望ましいが、戦後半世紀以上続いた集権下のもとでは、前者を国が、後者を自治体がという図式であった。これが、国の指示がない限りすべてをルーチン的に処理しようとする風土につながっている。地方分権が叫ばれる意味がここにあり、創意工夫して地域の実情に合った政策を次々に生み出していく風土を目指している。そして、これら政策をめぐる自治体間競争の時代を迎えようとしている。
これからの自治体職員には、高度化社会に適応するための複合的な能力が求められる。それらは、ある特定分野に対してひとかどの専門性を持ち担当実務をしっかり仕上げる専門的能力と担当職務に関する執務知識と経験、人脈という執務能力である。
政策というと新規の政策と思いがちであるが、多くの問題領域には既に何らかの手が打たれている場合が多い。そこでの課題は激変する社会環境に対してそれらの政策が適応しているか否かである。同時に成果と言われてきたものが、それが実質的に何をもたらすのか、次のステップにつながるものであるかどうかが判断の目安になってくる。それは単発では進化が見込めないからである。そしてそれらの政策は、実務レベルでは4つの局面に対応するものである。
保全型、補正型、更新型、創造型があり、何らかの原因で政策水準が下がって生まれた局面に対してが「保全型政策」、目標とする政策水準が設定された期間内で達成不可能な局面に対してが「補正型政策」、当初の政策遂行には問題が無いが周辺環境のレベルアップで目標水準を高くする必要が出た局面に対してが「更新型政策」、現行の目標値にとらわれず新たな目標を設定し、全く今までにないアプローチで立案するのが「創造型政策」である。最後の「創造型政策」こそが、時代の変化に対応しようとする政策である。
創造型政策の立案は3つの作業過程からなる。第一ステップは、あるべき姿を設定するところから始まる。それに基づいて目標が設定される。第二ステップは、現在の地域が抱える問題やこれまでの政策を明らかにする過程である。他の国や他の地域との比較の視点を交え現状を正確に把握することが必要である。「あるべき姿」と「現状把握」の二つの作業過程をへて、はじめて「ギャップ」が浮き彫りにされる。そして、この「ギャップ」をどのようにして解決するか、その解決方法を設計するのが、第三ステップの「手段の構築」である。そしてこの「創造型政策」の立案と執行には高度な専門的能力と執務能力が必要となる。