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市場スラックと商業政策
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商業における市場スラックとは、大規模小売店が取引をカバーできない「すきま」のことをさす。
かつては(今でも)ズボンのことをスラックスといったが、そのスラックと同じ語源で、「ゆるみ、たるみ」の意味である。
市場スラックの要因の第一は、総需要が総供給を上回るときに起こるとされている。大規模小売店が地域の需要を賄うだけの供給をできない場合に、大型店を規制する流通政策が働くと小規模小売業であっても事業を継続することが可能になる。

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誘致合戦の結果、互いに出店した大規模小売店同士の競争が起こり総供給が総需要を上回った場合には、業績が悪化した方が撤退することになる。地方に残存する廃墟と化した大型店の跡地はその結果である。

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商業者の存立意義は、社会が商業者に対してどのような役割を求めているのかという問題から導かれる。
そのひとつとして流通費用の軽減があるが、それは消費者側にも当てはまる。消費者にとっては買物についやす時間や移動費用がかっかてくるからだ。その意味から郊外に商業施設を許可したり、誘致したりすれば、それは即、既存の商業集積の空洞化につながるのである。商業集積の拡散が中心市街の空洞化、ひいては買物難民の大きな原因とされている。
日本ほどの経済大国でなくても、海外に行くと中心地に商店街が残っているのは郊外出店が規制されているのが大きな理由である。

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日本における小売業、飲食業、宿泊業などが位置づけられるサービス産業は今やGDPの7割にも達している。サービス産業を担っているのは、98%が中小企業で、残りの2%が大企業である。

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小売市場では革新的な業態として大規模な小売店舗が登場し、成長したにもかかわらず、多くの小規模の店舗が存続している理由は、小売市場には「市場スラック(すきま)」が広く存在するからだと考えられている。
その切り口がユニークであったり、大資本では対応できないやり方であったり、何らかの点において競争上の優位性があったりすると、競争に巻き込まれずに小規模店舗の存続が可能になる。

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市場スラックが生まれる要因をいくつかあげてみたい。
1)大規模店舗の郊外への出店規制は、先ほど述べたように消費者が郊外に行くのにかかる消費者側の流通費用(時間と移動の費用)の低減につながるために、小規模商店の商業集積の存立が可能になる。
2)商品のコモディティ化を回避したいというメーカー側の方針により、量販店への商品の出荷規制が行われる場合には小規模商店の品揃えの優位性が生まれる。
3)商業の「マクドナルド化」により人間関係の希薄化が鮮明になることで、人間関係が形成される店舗を選択したいとする消費者側の購買行動がおきる。
4)そもそも地域住民が少なく、道路や都市交通が発達していない理由で大規模店舗の出店の可能性がない地域。
5)多様で豊かな生活を探究したいとする、専門性の高い小規模店への消費者側の購買行動がおきる。
6)日本の小売市場においては特定の業態の占有率の程度が比較的低いことも市場スラックにつながっている。

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by stylejapan | 2014-10-31 09:47 | 地域再生
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