人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ
豊かな社会づくりへの背景~共生社会
豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10385029.jpg
「言葉が人と社会をつくる」。それが、ネットの普及によって、言葉から狂いはじめたという。ネットの言葉は「書き言葉的」でありながら、「話し言葉的」な特徴を持っていることによって「書き言葉的」社会が揺らいでいると藤原智美は指摘している。
豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10395799.jpg
政治家の言葉の中で「がんがん」「どんどん」といったオノマトペがたくさん使用されるようになり、政治が軽くなっているという見方がある。オノマトペは、典型的な話し言葉で、情感や気分に訴えかけるものである。
豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10403897.jpg
グーテンベルクの活版印刷の発明以来500年、近代社会は「書き言葉」が作ってきたが、いま、ネットの時代で、その規範が崩れつつある。多様性から均一性へと針を進めた活字が、ネットでは、また多様のカオスの世界に我々を導くのか?ネットの通信の速さが何をもたらすのか?という問題提起をしている。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_11392911.jpg

社会がネットことばへと言語を移行させていくのは、活版印刷の誕生が話しことば中心の社会を終わらせ、書きことば中心の社会をつくったように、時代の流れでもある。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_12055240.jpg

ネットでつながることの「軽さ」、その問題の本質は別のところにある。それは分かりあうことがむずかしく、そうした機会を作ることが面倒な生身の人間関係より、すぐにアクセスし確認できる仮想の人間関係の方を求めてしまう心理が働いている。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10415965.jpg
ネット社会ではだれでもが「つながることができる」という幻想が振りまかれているが、対話が不可欠の人間論が、むしろ安易なネットのつながりに人を追い込むことになっているともいえる。

何の為につながるか?ネットで「つながる」のは、ビジネスの人脈を得る為であったり、趣味の仲間を探したり、様々な情報を得るためであったり、さらに他者からの承認願望を満たすために、ひたすら装飾された自己を露出することであったりもする。外につながるという願望より自らの内側につなげ拠り所にしたいという側面もある。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10454733.jpg

SNSやブログといったネットことばのほとんどはネット的の他者と「つながりたい」という人間に備わった願望が電子的に組織されたものだといっていいだろう。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10462515.jpg

人類の歴史とは、自由を求め、そしてまた、徐々にその自由を獲得していく歴史であった。しかし今日、われわれは、獲得したはずの自由からの逃走を欲するようになっている。エリック・フロムは、そのように「自由からの逃走」を書き起こした。

フロムの言う「自由の二面性」とは、自由になりたい側面と自由になりたくない側面である。進んで不自由と服従を望むマゾヒスティックな部分が人間にはある。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10450890.jpg


フロムは大衆化社会を権威への自発的服従社会と捉えている。
自由を希求した場合に容赦なく襲われる大きな自己責任の重荷に耐えかね「孤独感・不安感・無力感」からの解放を求め、社会で支配的な価値観や集団の指導的な立場にあるリーダーに盲目的に従うことで、個人の自由につきまとう重責を緩和しようとする。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10444252.jpg
自由になれる筈なのに多くの大衆が自己責任や孤独感が伴う個人の自由を放棄して安定感を得たいという逃避的欲求へと流される。 これがフロムの言う大衆社会だ。
このような権威主義的パーソナリティーは「強者への忠誠」と「弱者への侮蔑」によって成り立つ。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10435867.jpg
フロムは、個人がどのように自由を獲得していくのか、そのプロセスを発生論的に解き明かす。まず、私たちは生まれ落ちた時、たいていの場合かならず母親との絆、血縁、地縁などの絆に結ばれている。それは私たちを守ってくれる絆であると同時に、私たちを束縛する絆である。成長するとは、この第一次的絆から徐々に解き放たれていくということである。

ここには2つの意味があるとフロムは言う。
ひとつは、肉体的にも精神的にも、少しずつ強くなっていくということ。そしてもうひとつは、しかしその一方で、私たちが孤独になっていくということである。
そこでフロムは次のように言う。「ここに、個性をなげすてて外界に完全に没入し、孤独と無力の感情を克服しようとする衝動が生まれる。」
個人が解放されればされるほど、私たちは孤独に耐えられなくなることがある。ここにフロムは、なぜ現代においてファシズムが勃興してきたのか、その根本原因をこのように暗示する。

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_10430578.jpg
そしてフロムは、この問題を解消する方についても、すでに答えを提示している。
「服従が孤独と不安とを回避するただ一つの方法ではない。もう一つ、解きがたい矛盾をさける唯一の生産的な方法がある。すなわち人間や自然にたいする自発的な関係である。それは個性を放棄することなしに、個人を世界に結びつける関係である。それは、愛情と生産的な仕事である。」

豊かな社会づくりへの背景~共生社会_e0025086_11392911.jpg
この発想は、ハンナ・アーレントが、自由とは単なる解放であってはならず自由の創設を必要とするといったことにも通じている。ともあれフロムの次のような洞察は、現代の私たちにとってもなお極めて重要な意味を持っている。

「個別化した人間を世界に結びつけるのに、ただ一つ有効な解決方法がある。すなわちすべての人間との積極的な連帯と、愛情や仕事という自発的な行為である。それらは第一次的絆とはちがって、人間を自由な独立した個人として、再び世界に結びつける。」















by stylejapan | 2014-10-26 08:24 | 生活創造プロジェクト
<< man of himself ... William James >>