ブログトップ
商店街に「観光」を持ちこむことの弊害

錦市場においても,観光地化によって,同様の課題が発生した.それは画一した観光地化の進展である.貸店舗(テナント)が増え,そのことにわざわざ錦市場で買わなくてもいいような土産物などの従来の錦市場にはみられなかった業態や,店舗が増加した.

錦市場は,商店街再生でよく議論される日本各地にある地元の一般的な商店街ではない.古くは平安時代に記録が残るほど,長い歴史を持ち,京都の経済,食文化の発展において中心的な役割を果たして来た.今日,錦市場が「京の台所」として知られるゆえんである.それゆえに,錦市場が抱える新たな課題は,単純な再生ではなく,画一した観光地化の進展により急速に失われつつある,

錦市場が長年伝え残してきた「京の台所」としての営みをいかに残すか,という伝統と刷新の両立である.

観光地化の弊害は,商品の画一化にもつながる危険がある.沖縄県那覇市の牧志公設市場での取引を 10 年以上にわたって観察している.牧志市場は錦市場と同様に,沖縄の地元市民が日々の食材を調達する,沖縄の食文化を代表する市場である.牧志市場では,過去20 年間で急速に観光地化が進展した.その結果,かつては魚や豚肉などは,地元の食文化に合った

バリエーションのある食材が販売されていた.しかし,急速な観光地化の進展により,わずか 10 年の間に,海ぶどう,チラガー,ミミガー,島らっきょうなど日持ちがして観光客へのインパクトの強い商品ばかりが棚積みして販売されるようになった.このことは沖縄の市場が長年有してきた豊かな食文化の継承という側面が犠牲となり,その代償として,修学旅行生や観光客などを起爆剤とする繁栄がもたらされてきたことを意味する.

沖縄牧志市場や錦市場のように,観光客によって繁栄を維持する道の残された商店街や市場は,日本各地の多くの商店街のように,衰退が経営的課題ではない.それとは全く異なる次元での問題をはらんでいる.錦市場は京都経済にとっても,文化を伝える資産である.歴史的商店街としての京都の文化を次世代に継承して行くことこそが,錦市場が京都において期待される使命なのである.
(京都錦市場商店街の活性化と伝統の維持・継承に関する組織生態分析:井村直恵)






[PR]
by stylejapan | 2014-03-09 23:10 | 地域再生
<< 『丸屋商社之記』 脱コモディティ化への発想 >>