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医薬品の本質を見極める~消費者と共に歩む製薬ビジネスを目指して
「医療」、「福祉」、「食事」、「仕事」は、誰にとってもとって大切な課題であり、これらは、国主導で守るべきだと思う。

ジェネリック医薬品(コピー医薬品)のテレビCMを見て違和感があるのは、ジェネリック医薬品は国民のため、あるいは日本の医療のためという印象を与えようとする点だ。OTC医薬品プロジェクトの特別委員をお願いした東大の松木教授も指摘するが、ジェネリック医薬品の宣伝文句に、中身が同じで値段が半分以下、のような表現がある。ジェネリック医薬品は先発医薬品の全く同じコピー商品か?答えは「ノー」。同じなのは主成分だけ。飲み薬の場合、錠剤かカプセルか、賦形剤(錠剤、散剤(粉薬)、顆粒剤などの固形製剤に、成型、増量、希釈を目的に加えられる添加剤)の種類と量、コーティングの種類、錠剤または顆粒の大きさなどで、主成分が全く同じで同じ量が入っていても、薬の作用が大きく変わる。だから「育薬」が必要だ。賦形剤として入っているレシチンなどでアレルギーを起こす場合もある。
飲んだ薬が直ぐに作用するわけではなく、胃や腸で吸収され、血流に乗って、作用する場所まで運ばれる必要がある。肝臓などでの代謝、肝臓(胆汁中へ)や腎臓(尿中へ)からの排出は薬の濃度を低下させる。薬の作用には、血中濃度と持続時間が重要だが、これは主作用も副作用も同じ。作用を発現するためには一定値以上に血中濃度が上がる必要があるが、上がり過ぎると副作用のリスクが高まる。こうした体内動態が剤形で大きく異なる。

先発医薬品は長い使用経験があり安全使用についての十分な情報の蓄積がある(育薬の成果)。しかし、ジェネリック医薬品にはそれがない。処方を変更してジェネリック医薬品に代えるということは、安価というメリットと引き換えに、先発医薬品に比べて十分に有効性と安全性が確認されていない薬を使用するリスクを患者が負うことになる。」 そして「ジェネリック医薬品はジェネリック医薬品メーカーのため」と結論付ける。

新しい薬に対して政府は安全性と有効性を確認して認可するが、それだけだと患者への一方通行だ。そこに“薬を育てる(育薬)”という考えが重要になる。育薬は医師・薬剤師が患者への効果や副作用をフィードバックさせ、その情報を薬の有効利用に活かすことだ。つまり、一方通行ではなく双方向で、薬の適切な使用法を確立し、より優れた薬になるように育てるわけだから、コンビニなどで医薬品を販売する時の問題点の一つは、このフィードバック情報が無くなってしまう=育薬の機会が失われることにある。  育薬の概念は、ちょっと分かりにくいかも知れないが、正に薬の本質である。
薬は、いつでも、誰でも、どんな状況でも同じ効果を発揮するのではなく、使い方によっては効果が異なり、思わぬ副作用が出てしまう。つまり、薬は適正な使用法と組み合わせて初めて有効になる。『ある薬をどれくらいの用量でどれくらいの期間使用すれば、日本人のどのような疾病の患者のどれくらいの割合に、どのような効果や副作用があったか。あるいは無かったか。』という情報は日本の社会で長年にわたって得られた貴重なものであり、社会の財産でもある。薬の効果は人種や食習慣、生活習慣、良く用いられる他の薬との相互作用、さらにはコンプライアンスなど患者の意識の違い(=文化、社会の成熟度)によっても変わるので、ある国や地域のデータをそのまま当てはめるわけにはいかない。
健康保険財政の悪化のために日本の医療費を下げる必要に迫られており、その一つの手段としてジェネリック医薬品の使用を促進しようとしているが、長期的には医療費低下に結びつかない。
by stylejapan | 2010-04-10 10:47 | OTC医薬品の開発
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